顧客から届いた問い合わせを「商品について」「請求について」「その他」に分類するような単純な振り分けにも、生成AIを使う機会が増えてきています。
ChatGPTのようなAIに問い合わせ内容を渡せば、どの部署が担当すべきかの判断は行なってくれるのですが、必要なのは分類結果だけである場合、わざわざ文章を生成する仕組みを使う必要はありませんよね?
2026年10月22日、OpenAIが一般提供を開始した「Decisions API」は、まさにそうした用途に特化したサービスで、文章を自由に生成するのではなく、あらかじめ用意された選択肢から答えを選び、条件に当てはまるかを判定し、評価を数値で返してくれます。
AIに求めるのは文章ではなく、判断結果
Decisions APIには、大きく分けて3種類の判定方法があります。
ひとつ目は「choice」。
複数の選択肢から適切なものを選ぶ機能で、冒頭であったような、問い合わせメールを営業部門、サポート部門、経理部門のどこへ送るかを決めるときに使うことができます。
ふたつ目は「predicate」。
指定した条件が成立する可能性を0から1の数値で返します。商品写真を調べて、傷があるかどうかを判定するといった使い方などが考えられますね。
そして、みっつ目の「score」は、あらかじめ決めた段階に沿って評価する機能で、商品の損傷程度を複数のレベルに分けて採点するような用途に向いています。
いずれも共通しているのは、AIに長い説明文を書いてもらう必要がないことで、役割ははっきりとしています。
例えば、問い合わせを分類したいだけなら、返ってくる結果は「経理部門」という選択肢で十分ですし、その結果を受け取ったシステムが、自動的に担当部署へメールを転送するというようなことができます。
通常の生成APIと何が違う?
こうした分類や採点は、従来のOpenAIのResponses APIでも実現できます。
Responses APIには「Structured Outputs」という仕組みがあり、AIの回答を指定したJSON形式で受け取れたり、問い合わせ内容を分析し、担当部署の名前を決まった形式で返すことも可能となっていて、そうなってくると、Decisions APIを使う理由はどこにあるのでしょうね?
この2つの違い、要はAIに何を求めるかという点にあります。
Responses APIは、文章の作成、情報の抽出、質問への回答など、幅広い処理を扱い、Structured Outputsを使えば、その結果をシステムが読み取りやすい形式に整えることができます。
一方、Decisions APIは最初から判定に特化しており、自由な文章を組み立てるのではなく、決められた質問に対して選択肢や評価値を返すことが目的となっており、顧客から届いたメールを読んで、内容を要約し、返信文の下書きまでを作るなら、Responses APIが適しています。
しかし、メールの内容を調べ、どの部署に送るかだけを判断するのであれば、Decisions APIが選択肢となります。
同じAIを使った処理でも、必要な結果によって適したAPIが変わるわけですね。
最大400問を一度に評価できる
Decisions APIの一般提供では、1回のリクエストで評価できる質問数が従来の200問から400問へ拡大されています。
ひとつの入力情報に対して、最大400個の質問を設定できるというのはかなりのオーバースペックのような感じも受けますが、ある商品写真を入力して、傷があるか、どの種類の商品か、どの程度の損傷があるかといった複数の項目を同時に調べられるということを考えると、あながち400項目という数値もけっして多いとは言えない数値ではあります。
さらに、判定結果には確率に関する情報も含まれ、これを利用すれば、判定の確信度が高いものは自動処理に回し、判断が難しいものは人間が確認するといった仕組みも考えられます。
その際に重要なのは、APIが返す確率やconfidenceが、そのまま実際の正答率を表すものではないことです。
例えば、確信度が0.9だったからといって、必ず90%の確率で正しいとは限りませんし、自動処理に使う基準は、実際のデータを使って評価する必要があります。
判定専用にすると、どれくらい速くなる?
Decisions APIが注目される理由には、その処理速度もあり、OpenAIは、GPT-6 Lunaを通常のResponses APIで使った場合と比較して、限定された判定タスクでは最大10倍高速になると発表しています。
実際の導入事例でも、速度や費用の改善が報告されていて、経費管理サービスのRampでは、GPT-6 Lunaとの比較で処理速度が4倍になり、コストは30%も削減されていたようですよ。
企業向けAIサービスのSierraでは、従来方式と比べて約3倍高速になり、1回あたりのコストが90%低下したとされていますし、語学学習サービスのSpeakでは、次のアクションを決めるまでの時間が1.4秒から0.13秒に短縮されたのだとか。
約91%の時間短縮です。
こうした違いは、利用者が操作するたびにAIの判断を必要とするアプリで特に意味を持ち、音声で会話するサービスでは、発話のたびに次の対応を決めなければなりませんのfr、判断に1秒以上かかる場合と、0.1秒程度で終わる場合では、会話のテンポにも大きな違いが生まれてきます。
Decisions APIはGPT-Liveとの連携にも対応していますから、会話の途中で次の行動を選ぶ用途にも利用することが可能。
出力トークンが無料という料金体系
費用面でも、通常の生成APIとは異なる特徴があって、Decisions APIの通常入力料金は、100万トークンあたり0.10ドルで、出力トークンには料金が設定されていません。
通常の生成APIでは、入力した文章だけでなく、AIが生成した回答にもトークン単位で料金が発生するのですが、Decisions APIでは、判定結果を返すことに特化した料金体系が採用されているため、入力する情報量だけの費用を考えればいいだけですので、これは結構お財布に優しいですよね。
問い合わせ分類のような処理を大量に繰り返すシステムでは、1回あたりの小さな費用差が大きく積み重なってきますし、使い分けを考えることができるのはいい傾向です。
生成AIにすべてを任せないという使い方
Decisions APIの登場で考えたいのは、AIを使ったシステムの役割分担で、顧客対応を自動化する場合、最初にDecisions APIで問い合わせ内容を分類します。
よくある質問なら、決められた回答を表示し、個別の説明が必要ならResponses APIで文章を生成、さらに複雑な相談であれば担当者に引き継ぐなどのような流れなら、すべての問い合わせに対して、最初から文章生成を行う必要はありません。
画像を扱うサービスでも同様で、商品の状態を判定する部分にはDecisions APIを使い、その結果をもとに顧客向けの説明文を作る部分には通常の生成APIを使うといった分担が考えられます。
これまで生成AIを活用する際には、「どのモデルが高性能か」「どれだけ複雑な指示を理解できるか」が注目されがちでしたが、実際のアプリや業務システムでは、すべての処理に高度な文章生成能力が必要なわけではありませんし、単純な分類を大量に繰り返す処理と、顧客に合わせた説明文を考える処理では、求められる能力が大きく違います。
Decisions APIは、その違いをAPIの選択という形で扱えるようにしたサービスであり、AIに何でも任せるのではなく、判断だけで済むところは判断に特化した仕組みを使い、文章が必要なところで生成AIを使う。
問い合わせの振り分けから音声アプリの応答まで、その役割分担を具体的に考えられるようになってきており、AIに全てを任せるのではなく、人間との役割をどこまでの範囲にするのかを考えていくような流れになってきました。





